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魔導物語 闇に生きると言う事 第九話



  精霊の森深部  一日前 午前2時44分
 
−闇の剣よ。
『その声。元、我が主…。
−久しいですね。
『今ごろ、なぜ私に近づく。私の主は一度に一人。たとえ元の主と言えども、今の主が他に居る以上、お前は…。
 声の主、それはルーンロード。
−そんなことは分かっていますよ。私が、未練たらしくあなたに寄り沿って来た等とは思って欲しくないですねぇ。
『では…?
−シェゾ・ウィグィィ。
『何故?
−…あの者に、変化が起きましたね。
『それは…
−あなたが、こんな所に居るのが何よりの証拠。闇の魔導士が、分身ともいえる闇の剣を何故放っておきますか?
 こんな所。それは、この場所。一見どことも付かぬ森の奥深く。
 浅く、澄んだ湧き水をたたえた泉の中に、闇の剣は沈んでいた。
『骨休めだ。ここの水は私の体にいい。
 ここに居ることによる結果、それは嘘ではない。闇にある剣にして、汚れ自身には染まっていない。剣は、水と精霊により、現世で汚れた体を清めていた。
 闇とは属性。決して汚れや邪悪と言う意味ではないのだから。それを、証明していた。
−そうだですね。あなたは、触媒。どんなものにも染まります。
『話は?
−せっかちですね。彼に似てきましたよ。
『どうもお主はいつでもマイペースだ。
 流石は、以前のコンビ。奇妙な息の合い方があった。
『なぜ、主をそれほど杞憂する?
−杞憂とは悲しいですね。
『主は、一人で歩いている。悩むことこそあれ、『道』を踏み外しはしない。
−なら、いいのですが。
 闇の剣は、ありはしない目を、これもまた姿無き者に向ける。
『何故、主をそれほど…?
−決まっているでしょう。私は、彼がとても好きなのですよ。真っ直ぐで、曲がっていて、純粋で、汚れていて。素直で、嘘吐きで…。強くて、弱くて。冷たくて、優しい…。
『主は何者だ?
 森に、風が流れた。それは、『二人』の笑い声であろうか。




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