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魔導物語 約束 エピローグ



  エピローグ
 
 医院の屋上。
「だから何度も言っているだろう。確かにあの後俺はミノタウロスと最後まで戦ったが、アゾルクラクの消失のおかげで、もう奴は木偶人形に近かった。だから、この程度の怪我で済んだんだ。お前と比べたら、俺なんて掠り傷だ」
「……」
 
 あの後、シェゾは城のある湖から山一つ離れた海岸で見つかった。
 かなり衰弱していたが、地元住民の手当で一命を取り留める。
 そして、そこに居るシェゾを見つけたのは、四日後にそこを突き止めたラグナス。
 ミノタウロスを倒した後、そのままの体で彼を捜しあてたのだ。気の遠くなりそうな程の聞き込みを元に。
 それだって、殆ど勘に近いが転移したと言う感覚と、それらしき弱々しい転移後のノイズを奇跡的に追えたからに過ぎない。
 それを、二人だからこそと言ったら彼らはどう思うだろうか。
 かくして、ラグナスはシェゾと共に街に帰った。
 アゾルクラク消滅から一週間後の事である。
 
「約束も一応果たしている。シェゾ、頼むからこれ以上腐らないでくれよ」
「……」
 だが、シェゾは無言で部屋に戻ってしまった。
「いや、帰ってもよ、どうせ俺も同じ部屋なんだから…」
 シェゾが居なくなってから、ラグナスはやれやれ、と呟く。
 どうにも、おかしなところで意地っ張り、かつ子供なシェゾであった。
 
 次の日。
「……」
 ラグナスは独り、医院の屋上で暇を持て余していた。
 アルルが、やはりと言うか当然と言うか、朝から昨日のリベンジに来ている。
 しかも帰れと言われない為に、と看護婦の格好で現れた。
 シェゾももう何も言わず、だまってアルルの好きにさせている。
 そんな二人の世界は、意識してはいないのだろうが端から見てその甘さは筆舌にし難いものがある。
「…つーか…俺、やっぱ今日退院しようかなー…」
 あの二人のノロケを見る事と、僅かな傷の痛みなど比べる間でもない、と独り心の傷の方を癒したいと思うラグナスであった。
 
「…らほら、いい子だからあーんして! あーん!」
「分かったからベッドに乗るな…」
 
 たまたま風に乗り、階下から二人の声がかすかに聞こえてくる。
 それは、ラグナスの決意を固めるには十分な科白だった。
 
 
 約束 完


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