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魔導物語 共に歩みて幸多かれ エピローグ
 
 
 
  エピローグ
 
「いや、リエラの為にって言うか、リエラの心意気に報いる為に、俺らで出来る事、何かしようと思っていたんだよ旦那」
 そこに居たのは、エディ達裏仲介人だった。
 リエラへの手向けと思ってか、彼らは彼らなりに行動していたのだ。
「しかし、まさかリエラとアルが…」
 エディは、思い出して再び肩を落とす。
「余り、詳しく話す気はなかった」
「いや、それは勿論旦那が正しい。実際、十分だと思ってたよ。でも、ここでその話を聞けて良かった。うん」
 そう言って、髭のクマと他二人は、それぞれが肩や首をならしていた。
「…おじさん達、何していたの?」
「この図書館、こんな辺鄙なところにあるクセに、その濃さっつったら随一だって言うだろう? ここなら、あるとおもったのよ。旦那の目の役に立ちそうなものが…」
 どうやら、図書館をこんな風にしたのはあの男とその一味だ。
 シェゾのように正面切ってではなく、用水路から抜け道を見つけ、ネズミの様に図書館へ侵入したらしい。
 魔導によるシールド、恐怖感に守られた図書館も、予想外のローテクと人の『その気』には形無しだった様だ。
 そして、何はともあれ難しそうな辞典から絵本まで読みあさり、情報を集めて周ったと言う。
「…ちゃんと片付けてね、おじさん」
「あー、元の場所ってのは難しいが、棚には戻すよ」
「…いいの? それで」
「代わりに、入れた本の一覧は書け」
「あ、成る程」
「おう。でだ、旦那、改めて、あんた目が見えねえって?」
「ああ」
「…ホントなんだねぇ。すごいねえ。前に会った時は言われるまで、これっぽっちも気付かなかったぜ」
「やっぱおじさんもそうでしょ? ほら、ボクだけじゃないよ」
「で? それがどうした」
「無視しないよーに…」
 アルルが拗ねる。
 エディがひげをいじりながら、おお、と言って立ち上がりながら話す。
「いやな、本を見ていると、どうも旦那の視力を取り戻すのにいい方法があるらしいんだよこれが」
「ホント!?」
「ああ。ほら、嬢ちゃん、この本だ」
 そう言って渡されたのはこれまた古ぼけた革張りの本。
 ぺらりとめくって、アルルは眉をひそめた。
「…古代語なんですケド」
「ん?」
「貸せ」
 シェゾは無造作に本を奪うと、ぺらりとめくる。
「…だから、キミは…」
「旦那、目…」
 シェゾの行動は、そこにいるシェゾ以外、全員の目にやはり不可解に映る。
「…北の、フォロに何かあるのか?」
「あ、ああ…」
 シェゾは確信を問う。
 周囲のみんなは、やはりばかされている様な気分に陥った。
「聞いた話じゃ、あんたの視力が戻らないのは、いわば事故だ。本当なら、リエラが死んだ時に戻らなきゃならない」
「そうなの?」
「ああ。最初はちょっと困った」
「ホント?」
 今まで、彼の行動にそんな様子は欠片も見えない。
「でだ、その原因はあの空間の障気がリンボだかって言う特殊な奴によって生み出された妙竹林なのだってのにある」
「だろうな」
「言うなれば、それは呪いだな。あんたの基本的な力こそそのままのようだが、あの場で使った力に対して、ロックがかかっちまったのさ」
「ロック?」
 アルルが問う。
「その様だな。…どうやらお前の情報、信用出来そうだ。幾らだ?」
「冗談! まだ俺の方が礼が足りないくらいだ。勿論タダだよ! そもそも、その為にこうしていたんだ。まさか、旦那がここに来るとは思わなかったけどよ」
「なら、その場所までの詳細と掴んでいる情報内容、それとその本、もらう」
「明日に一揃え持っていくよ。宿を教えてくれ」
「今じゃないのか?」
「今日は大掃除だ」
 髭のオヤジは、周囲の瓦礫の山の如き本を見て溜息をついた。
「…じゃ、俺は行く。俺が泊まる宿は…探せ」
「へいへい」
「俺達、でしょ!」
 アルルは彼の後を追った。
 
 その後、神官達が揃って居なくなってしまった村は意外に平穏無事にその後を過ごしたと言う。
 神の消えた村は、神が消えた事で本来の姿に戻ったのかも知れない。
 
 街への帰り道。
 シェゾは考える。
 帰ってきたと思ったら、どうやらまたすぐに出掛けなければならないようだ。
 さて、次の旅はどうなる事やら…。
 シェゾはぼんやりと考える。
 とりあえず、視力が戻る事を願って。
 
 
 共に歩みて幸多かれ 完


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