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魔導物語R Reckless driving 中編



  危い(やばい)
 
 シェゾはそう思った。
 Reckless drivingの兆候だ。
 しかも確実な…。
「ねえ…。さっきも言ったけどさ、シェゾがこんな状態ってホントにこれから先多分無いよね? 屋外のバインド実験の失敗で自分が脱力状態になるなんて…」
 多分二度と無い。シェゾもそう思った。
 アルルは、横臥するシェゾにゆっくりと躯を重ねた。そのまま、シェゾの首筋に唇をあわせると、そのまま離さずに鎖骨へと移動する。
「ボクね、シェゾの鎖骨って大好き…」
 アルルは鎖骨をそっと噛む。
「…変わったところが好きだな」
 シェゾは出来るだけ平静な口調で応える。
「ふふ…。女の子って、男の人のどっかが特に好きって人多いんだよ。ボクみたいに鎖骨が好きだったり、他には顎や、肩胛骨が好きだったり、中には、手首の引っ込んだところが好きって言う人だっているんだよ…」
 そう言って鎖骨にそっと舌を這わせるアルル。
 舌先で軽く骨をなぞるので、その気もないのに鳥肌が立ちそうになる。
「ねぇ、パジャマ…邪魔だね」
 アルルは、窮屈そうな胸のボタンに手を伸ばした。
 アルルがちょいと人差し指でボタンを捻るだけで、三つ程連続でボタンが外れた。
 もう、シェゾの胸板は露わになっている。
「アルル…よせよ…」
 シェゾは参った、と言う顔で呟く。
「ふふ…。ねえシェゾ、ボクの気持ち…少しは分かった?」
 アルルはシェゾの胸に手を滑らせ、上半身をすっかりはだけさせながら言う。
「何の気持ちだ?」
 シェゾは問う。
「こうやって…、好き勝手される気持ち。普段、ボクが抵抗しても、全然聞いてくれない時の、気持ち…」
 アルルは、そう言ってシェゾの胸にキスする。
 小さく彼女の口から吸引音がし、ややぎこちなくもその胸にキスマークを刻む。
 筋肉質ではないが、十分にたくましいその胸板。唇を軽く押し返すその筋肉の、肌の感触は、アルルの理性のタガをゆっくりと、確実に外す。
 自己満足でありつつも一生懸命な、小さい吸引音はシェゾの耳をくすぐる。
 肺活量の少ないアルルは、すぐ息を上げつつ、シェゾに言った。
「やだって言うのに、止めないんだもん…。ボクが泣いても、平気な顔してるもん…」
 そう言いつつ、アルルは再びシェゾの胸にキスの雨を降らせる。
 小さな跡は四つ、五つと増えてゆく。
 それは、シェゾへの想いの具現化であるかの様に数を増やす。
 アルルは、ふとシェゾの乳首をそっとついばんだ。
「ん…」
 逆にアルルが声を出す。
 少女は、そんな自分の行為にいやらしいという背徳感、且つ本能的快楽を覚える。
 ボク、今、男の人の…シェゾの胸を…。
 そう思っただけで、アルルはぞくぞくした感覚を背中に走らせる。
 心臓の鼓動が嘘みたいに早まるのが分かった。シェゾにも鼓動が伝わるほどに。
「ねえ、感じる…?」
 アルルは頬を上気させながら聞く。
 自分の時があれだけの反応を示すのだ。シェゾだって、いくらかは…。
「ん?」
 予想を裏切り、シェゾはごく平静だった。
「…なんで?」
 アルルは訝しげにシェゾを見る。
「我慢してない? 無理は体に毒だよ?」
 そんな態度に、むしろアルルは意地になる。
 一応、素の状態よりは堅くなっているシェゾの胸のそれに、アルルは再び唇を寄せた。
 唇で、そして、身体を寄せて、思いつく限りの攻撃を加える。
「ぷは…」
 アルルはすっかり息を上げた。
 
 …うう。なんか、ボクの胸のほうが…。
 
 アルルはシャツの下の自分を恥じた。
 シェゾの胸に自分の胸をすり寄せる度に身を震わせるのは、アルルばかりだったから。
 シェゾは、そんなアルルを見てむしろ余裕たっぷりに笑みさえ浮かべる。
「むむ…」
 
 こうなったら、意地でもシェゾを鳴かせちゃる!
 
 アルルは誓う。
 だが、そう心に刻みつつも、アルルはためらった。
 
 でも、もう、ボクに残された攻撃手段って…。
 でも、でも…それって…。それって…。
 
 アルルは混乱した。
 
 えーと、えーと、こういうコトすると、ユニコーンが逃げちゃうとか…。
 あ、それはもっと後の話だっけ…?
 あ、後? この後って…。
 わわ、やだああああ!
 
「……」
 シェゾは、さっきから胸に顔を埋めたまま考え事をしているアルルを見ている。
 目を泳がせながら、困惑しているのが手に取る様によく分かる。
 なけなしの知識で、それでも一矢報いようと頑張るアルル。
 シェゾは、そんなアルルを素直に愛おしく思った。
 そして。
「……」
 シェゾが、ぴくりと眉を動かした。
 
 
 
  

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