最終話 Top


魔導物語 pluckily potion エピローグ



  epilogue Incomplete a pluckily potion.
 
 ウイッチの自宅前、二人は夕日に影を落として見詰め合っていた。
「シェゾ。あの、申し訳ありませんでした。こんな事になってしまって…」
 うなだれるウイッチ。落ち着きは取り戻していた。
「いや、あれは元々は何代か前の闇の魔導士の産物だ。迷惑をかけたのは俺の方だ」
 すまない、と詫びるシェゾ。
「い、いえ! わたくし、気にしていません! シェゾが闇の魔導士なんて事は百も承知の上ですし、戦いは元から無情なものですし、それに…それに…わたくしを助ける為に戦ってくださったのですもの…。感謝こそすれ、恐がるなんて…」
 ウイッチは今になって、さっきまでの子供みたいに泣いていた自分が、恥ずかしくてしょうがなかった。
 あまつさえ、彼に対して恐怖を抱いた自分を恨めしく思う。
「じゃあ、俺は行く。薬、作れなくて悪かったな」
「…いえ。そんなこと…」
 シェゾは背を見せて去ろうとする。
「シェ…シェゾ!」
 シェゾは振り向く。
「あ、あの…わたくし、あなたの事、恐いなんて思ってません! だ…だいす…だ、大事なお友達です!!」
 ウイッチはばたばたと家に入ってしまった。
「…そりゃどうも」
 シェゾはあっけにとられる。
 家の中。ウイッチはベッドに飛び込んで、枕の下に頭を潜り込ませる。
「わたくしの根性なしぃぃぃっ!!!」
 ウイッチは、もうその日は何もする気が起きなかった。
 
 家の中でのそんな悶絶。
 シェゾはそんな劇が開かれているとは露知らず、家路についた。
 だが、その心には何か安堵の気持ちがある
 数少ない、心開ける相手を失わずに済んだ事についてだろうか。
 勿論そうだと思うが、もう少し、別の気持ちがあるような気もした。
「……」
 だが、特にそれがどういう気持ちかまでは頭が回らない。
「そのうち分かるか」
 そんな安穏なところが彼女達をやきもきさせる最大の原因なのに、当の朴念仁はそういう肝心な所の解決努力をしようとしない。
 
 ウイッチが作ろうとしていた勇気のポーション。
 もしかしたら、それが必要なのは他の誰でもなく、シェゾにこそ一番必要な薬なのかもしれない。
 
 シェゾは夕焼けを眺めながら、晩飯に何を食うかと呑気に考えていた。
 
 
  pluckily potion 完
 


最終話 Top